松下 みゆき

何と言っても壮大な遺跡群。次から次ぎへと迫ってくる三次元映像はいつしか四次元映像になり、気がつけば時代は過去、魂までゆらゆら浮遊し、ラムセス二世に恋してしまう。アメンラー神の前で、神官の祈りの声に震えてしまう。圧倒的なスケールの前では、全ては錯綜し、混沌と興奮の坩堝(るつぼ)に吸い込まれる。地位も財も宮殿も、何もかもがナイルの流れに溶けていき、残るのはかつて生きた人間の思念のみ。けれども、答えは、ある。なぜかそこには、謎にからまって苦しむ者への答えが、乾いた風にのって舞い踊っている。迷い込んだ幻想は、シャッターを押したはずのカメラの中には写っていないのに、シャッターを押した指先だけが密かに覚えている。
イスラム教のモスクの近くの下町を、ロバが走る走る走る、車のクラクションが鳴る鳴る鳴る、陽気なエジプト人が叫ぶ、怒鳴る、笑う。そして、私はここにいる。

リハブ

1993年にカイロ大学文学部日本語学科を卒業しました。その後、ヘルナン大学のホテル・観光学部で2年間ガイディングについて勉強しました。観光会社でのオペレーターの仕事は今年で6年目になります。また、日本語ガイドの免許取得後、3年ほど日本人のお客様をあちこちの観光場所へご案内いたしました。エジプトの観光の見所はたくさんありますが、私は特にルクソール東岸にある神殿や西岸にある岩窟墳墓が大好きです。 たくさんの日本のお客様がエジプトにお越しいただきますようにとお祈りしています。